特集1 医療経済評価の日本での活用
5.医療資源配分の倫理
齋藤信也
1
1岡山大学大学院保健学研究科・教授
pp.2801-2806
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201312077
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医療資源は基本的に稀少であり,そこには配分のためのルールが必要となる。医療資源配分の問題を考える際には,程度の差はあれ,功利主義的な発想に基づくことが通常である。効率性に優れた医薬品を優先するといった,経済的思考を医療の世界に持ち込むことへの忌避感情が強いことは理解できるが,現在までのところそれに代わるような合理性のある考え方はない。もちろん,功利主義一辺倒の資源配分法はあり得ないことであり,功利主義的な考え方の欠点を十分に理解した上で,平等性をどのように担保していくかという工夫は必要である。しかし一方で求められるのは,資源の有限性を自覚した上での当事者意識を持った冷静な議論であると思われる。