特集 糖尿病治療薬の最前線 ~臨床試験・臨床疫学的観点も含めて~
5.チアゾリジン系薬とその治療成績
森豊
1
1東京慈恵会医科大学附属第三病院糖尿病・代謝・内分泌内科・診療部長
pp.2367-2374
発行日 2013年10月1日
Published Date 2013/10/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201310079
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チアゾリジン系薬は,長期にわたる血糖改善効果が,単独療法,複数の経口血糖降下薬との併用療法,あるいはインスリンとの併用療法など,さまざまな形で報告されている。それに加え,血糖降下作用を超えたさまざまな多面的効果が,動物実験や臨床研究で報告されている。
また,チアゾリジン系薬とわが国においても使用頻度が拡大しているDPP-4(Dipeptidyl Peptidase-4)阻害薬の併用の意義について考えてみると,「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌能低下」の両方を改善できること,上質な血糖コントロール(持続血糖モニター〔CGM〕を用いた解析で,血糖変動幅が縮小された平均血糖値〔HbA1c〕の低下)が得られること,肥満患者などの血清DPP-4濃度が高い症例では,チアゾリジン系薬が血清DPP-4濃度を低下させ,DPP-4阻害薬の効果を高める可能性があること,等があげられる。
一方,ピオグリタゾン投与と膀胱癌リスクについては,数年前よりさまざまな調査結果が発表されており,中でも前向き研究であるKPNC(Kaiser Permanente Northern California)研究の8年間の中間成績が公表されている。現時点では,ピオグリタゾンと膀胱癌リスク上昇との関連は断言しがたいのと同時に,両者の関連を否定することも困難であると言える。民族差や食事・社会生活上の相違などの要因の検討が今後必要であり,アジア人での大規模かつ長期間の研究を積み重ねることが期待される。