特集 臓器移植の現況と今後の展望
10.免疫抑制療法と新規免疫抑制薬の役割 1)抗体製剤の現況と今後の展望
渡井至彦
1
,
鳴海俊治
2
,
小林孝彰
3
1名古屋第二赤十字病院移植外科 部長
2名古屋第二赤十字病院移植外科 副部長
3名古屋大学大学院医学系研究科移植免疫学寄附講座・教授
pp.2188-2194
発行日 2013年9月1日
Published Date 2013/9/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201309110
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近年の効果的な免疫抑制剤の投与により,臓器移植後の拒絶反応の頻度は激減した。副作用を考慮してステロイドやカルシニューリン阻害剤(CNI)を減量する目的でバシリキシマブやサイモグロブリン禾の使用は,induction療法として日本や欧米で定着している。また,CNIを最初から使用しない免疫抑制療法では,Belataceptが米国で認可され,新しい免疫抑制法として拡がっている。
一方で,移植成績の向上とともに免疫学的ハイリスク移植も積極的に行われるようになり,ABO血液型不適合や既存抗体陽性例では,リツキシマブや高用量免疫グロブリン療法(High dose IVIG)による脱感作療法が行われている。また,de novo抗体産生による抗体関連拒絶反応に対しては,High dose IVIGやエクリズマブといった生物学的製剤による治療効果が報告されている。これら生物学的製剤は効果に対する期待とともに,副作用の特徴を十分に理解・考慮して使用する必要がある。