発行日 2017年1月20日
Published Date 2017/1/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2017161426
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60歳代男。数日前から尿が濃く、全身倦怠感と皮膚のそう痒感を認め、30歳頃に薬剤性肝障害の既往があることから当院受診した。肝・胆道系酵素の著明な上昇を認め同日緊急入院となり、dynamic CTで胆嚢壁の軽度肥厚を認めた。肝生検の病理像では肝実質の壊死炎症反応が高度であり、門脈域に軽度の線維性拡大と中等度のリンパ球・形質細胞浸潤、小葉間胆管の変性および破壊を認めた。抗ミトコンドリアM2抗体が高値ということも合わせ、原発性胆汁性肝障害(PBC)と活動性の高い肝炎の合併(オーバーラップ症候群)として矛盾しない所見であった。しかし、自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2013年)に記載の診断基準では、オーバーラップ症候群の確定診断には至らなかった。そのため、ステロイドの導入はせずにウルソデオキシコール酸の投与を開始した。投薬開始後しばらくは肝・胆道系酵素の改善を認めなかったが、第10病日より速やかに改善した。また、そう痒感も消退した。なお、約4年後に測定した抗ミトコンドリアM2抗体は陰性であった。
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