特集 GERD診療Update 2023
巻頭言
山道 信毅
1
1東京大学医学部附属病院予防医学センター/消化器内科
pp.1125-1126
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000002742
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2018年以来,5年ぶりに,本誌ではGERD(胃食道逆流症)の特集が組まれることとなった.1990年代までは「酸関連疾患といえば消化性潰瘍」が常識であったが,それから四半世紀を経て,上部消化管疾患の大きな疫学的変化があり,欧米諸国と同じく,わが国でも「酸関連疾患といえばGERD」となったのは,誰もが認める事実であろう.本邦におけるHelicobacter pylori感染率の低下がこうした疫学的な動向に関係していることは間違いないが,これに加えて,消化管症状のコントロールを重視する医学の方向性が,上部消化管の臨床対応にも大きく影響している.機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群,非びらん性逆流症(NERD)など生命予後への直接の影響がない(あるいは小さい)疾患は,以前は軽視されがちであったが,QOLを含むさまざまな視点から,「症状主体の病態」に対しても適切な臨床対応をすべきという考え方が広がったことは,実臨床において多くの医師が感じる近年の大きな変化である.本邦のGERD臨床の基幹となる「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン」は2009年に初めて公開されたが,症状に基づく酸分泌抑制薬の使用を示唆したガイドライン初版が,こうした流れを推進する大きな役割を果たしてきた.
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