5．各種病態と基本的対応（2）透析患者の口腔粘膜・舌の異常，口腔癌

透析患者は，唾液分泌減少や易感染性を有することから，時に特殊な口腔環境を呈することがある．とくに口腔粘膜は，唾液分泌減少の影響により，唾液が有する潤滑・保湿作用や自浄・抗菌作用，さらには上皮修復促進機能が減退することから，影響を受けやすい．代表的な症状としては，口腔粘膜表層の乾燥により，保護作用が消失し炎症性変化を伴い，発赤，灼熱感や痛みをもたらすことがあり，とりわけ舌においては，表面に存在する各種乳頭が萎縮変化を起こして，炎症を伴う平滑舌を起こしやすい．さらに，易感染性から日和見感染の一種である口腔カンジダ症の発症を繰り返す．カンジダ症は，典型的な白苔を伴う偽膜性カンジダ症と，義歯装着者の粘膜面や口角に発症し，白苔を伴わない紅斑性カンジダ症に大別される．後者は，義歯の刺激や栄養不良と診断され，根本的な治療が遅れることから，専門医の受診が必要となる．このほか，高齢の透析患者は，口腔癌の発症に留意する必要がある．各種口腔粘膜の障害で，各種治療に反応しないものは，早期に歯科や歯科口腔外科受診を勧奨することが重要である．