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日本麻酔科学会第72回学術集会講演特集号 招請講演
末梢神経ブロックはより末梢へ―鎮痛と筋力温存を両立する神経ブロック―
Peripheral Nerve Blocks Go More Peripherally:Methods for Achieving Both Analgesia and Muscle Strength Preservation
武田 敏宏
1
Toshiya TAKEDA
1
1香川大学医学部附属病院麻酔・ペインクリニック科
キーワード:
末梢神経ブロック
,
筋力温存
,
末梢枝ブロック
,
術後鎮痛
,
選択的感覚枝ブロック
Keyword:
末梢神経ブロック
,
筋力温存
,
末梢枝ブロック
,
術後鎮痛
,
選択的感覚枝ブロック
pp.S33-S43
発行日 2025年11月20日
Published Date 2025/11/20
DOI https://doi.org/10.18916/masui.2025130006
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はじめに
近年,超音波診断装置の性能向上と超音波解剖学の理解の深化により,超音波ガイド下神経ブロックの成功率と安全性は大きく向上した。神経や周囲組織および穿刺針の描出精度が向上したことで,薬液の正確な投与が可能となり,過去の盲目的ランドマーク穿刺と比較して合併症の頻度も低下した。こうした技術的進歩によって,神経ブロックはその優れた鎮痛効果を背景に,周術期鎮痛法の第一選択として広く施行されるようになった。
一方で,四肢に対する神経ブロックでは,術後の筋力低下が依然として課題である。特に大腿神経ブロックによる大腿四頭筋の筋力低下や坐骨神経ブロックに伴う下腿筋群の機能低下は,術後のリハビリテーションに支障を来し,転倒リスクを高める。また,腕神経叢ブロック(特に斜角筋間アプローチ)では,横隔神経麻痺が高率に発症し,一過性・一側性ながら呼吸機能低下を来す可能性がある。このような運動機能への影響は,神経ブロックの適応を検討するうえでの重要な要素である。
こうした背景を受けて,現在,四肢ブロックにおいて鎮痛効果を維持しつつ,筋力低下を最小限に抑える手法の開発が求められている。本論文では,鎮痛と筋力温存を両立するための一つの方策として,“より末梢” での神経ブロック法に着目し,その適応と限界,および臨床応用の実際について解説する。

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