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公益社団法人日本麻酔科学会第70回学術集会講演特集号 招請講演
非心臓周術期心筋傷害(myocardial injury after non-cardiac surgery:MINS)の術中管理と予後―MINSを見極めよう―
Myocardial injury after non-cardiac surgery(MINS):perioperative treatment and prognosis―MINd your Steps!―
石井 久成
1
Hisanari ISHII
1
1天理よろづ相談所病院麻酔科
キーワード:
非心臓周術期心筋傷害(MINS)
,
心筋トロポニン(cTnT)
,
大規模臨床研究
Keyword:
非心臓周術期心筋傷害(MINS)
,
心筋トロポニン(cTnT)
,
大規模臨床研究
pp.S1-S9
発行日 2023年11月20日
Published Date 2023/11/20
DOI https://doi.org/10.18916/masui.2023130002
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はじめに
非心臓周術期心筋傷害(myocardial injury after non-cardiac surgery:MINS)は,ここ数年,周術期医療に関与する人口に膾炙してきた新しい疾患概念であるが,明確な定義ならびに診断基準はない。MINSを提唱する研究者は,MINSを心筋梗塞の診断基準を満たさないレベルの周術期の心筋傷害で,非心臓手術の術中または術後30日以内に発症した心筋虚血と表わしている。診断は心筋トロポニン(cTnT)値の上昇によってなされ,症状の有無は問われないとされる。プラーク破綻と血栓形成が主因の心筋梗塞と異なり,MINSの原因の2/3が心筋の酸素需給バランスの破綻である。MINSの予後は悪く,術後の死亡に独立して関連し,種々の非心臓手術の周術期ガイドラインにおいて,術後にcTnT測定を行いMINSを診断することが推奨されている。術中管理とMINSの関連については,遷延する平均動脈圧の低下ならびに心拍数の上昇によりMINSのリスクが高まるとされる。術中の循環管理が,術後の死亡に関連するMINSの発症を左右するとすれば,麻酔科医の果たす役割は大きいが,現況ではMINS発症を低減する至適血圧・心拍数ならびにそれに必要な方策について推奨はない。本論文では,周術期管理において関心が高まるMINSについて,その概念の成立の礎となった規模の大きい臨床研究(マクロな視点)から論を起こし,細胞レベルでみたMINSの機序(ミクロな視点)にも言及することで,臨床現場の麻酔科医としてMINSを見極めてみたい。
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