連載 形成外科Topics!
M.O.I.S.T.:創傷治療をすべての医療者が計画的に行うための新しい概念
寺師 浩人
1
,
市岡 滋
2
,
大浦 紀彦
3
,
田中 里佳
4
,
木下 幹雄
5
1神戸大学医学部形成外科学教室教授
2埼玉医科大学病院副院長/形成外科教授
3杏林大学医学部形成外科教授
4順天堂大学大学院医学研究科再生医学/医学部形成外科学講座教授
5TOWN訪問診療所理事長
pp.157-162
発行日 2024年2月10日
Published Date 2024/2/10
DOI https://doi.org/10.18916/keisei.2024020010
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はじめに
2003年にSchultzらが提唱したWound Bed Preparation(創面環境調整)は,T.I.M.E.コンセプト 1)2)とともに世界的に創傷治療の指針として広く用いられている。20年が経過し,近年T.I.M.E.は,Regeneration and Repair(先進的創傷治療)およびSocial Factors(患者の社会的課題)の項目が追加されT.I.M.E.R.S.へと進化した。また2020年には,創傷のバイオフィルムに対する戦略として4つのステップから成るWound Hygiene(創傷衛生) 3)が提唱された。これらは,わが国の創傷ケアを担う医療者が実践してきたケアプロセスに合致したものである。
M.O.I.S.T.は,Dissemondらが2017年に考案した慢性創傷に対する局所治療の概念で(表) 4),「M」(湿潤バランス),「O」(酸素バランス),「I」(感染管理),「S」(サポート戦略),「T」(組織管理)の項目からなり,T.I.M.E.コンセプトが提唱されて以来,新しく使えるようになったさまざまなデバイスや治療方法について言及している。特に,創傷の低酸素症における酸素バランス(O)に対する介入や,創傷治癒過程に生物生理学的効果をもたらす治療(S)についての項目は新しく提起されたものである。
ここでは,M.O.I.S.T.に関してわが国の現状を踏まえて概説する。
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