臨床経験
女性の心身症状を漢方医学的な肝・心の失調と捉え,酸棗仁湯を臨床応用した6症例の検討
松岡 竜也
1
,
岡村 麻子
2,3,4
,
坂本 雅恵
1
T. Matsuoka
1
,
A. Okamura
2,3,4
,
M. Sakamoto
1
1総合病院土浦協同病院産婦人科
2かしわの葉レディースクリニック
3つくばセントラル病院産婦人科
4東邦大学薬学部
pp.323-330
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003343
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酸棗仁湯の保険適用症は「心身がつかれ弱って眠れないもの」とされ,しばしば不眠に対する専用方剤として認識される。しかし,酸棗仁湯の「証」を古典に立ち返り考察すると,肝(情動,血の貯蔵と供給,筋緊張などを調節する根本である臓)や心(血を脈に沿って循環させたり,思惟活動を調節したりする根本である臓),魂(肝と心の間を往来し,意識を清明に保ちつつ正気を養う役割を担う精神活動)の働きが失調した状態と考えられる。すなわち,酸棗仁湯は「情動の募りや筋の緊張が長く続いた結果,血が巡らずに筋が疲労し,心身が疲弊しているため本来であれば休息したいが,同時に精神や思い・考えなどが擾乱されているので動揺・煩悶し,どのように振る舞ったらよいのかがわからない」状態に適した方剤と考えられることより,ストレス社会を生きる現代女性の心身ケアに有効であった。

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