特集 胎盤の科学がもたらす周産期疾患の新たな理解
8.胎盤機能不全に対する薬物治療:ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬
田中 博明
1
,
田中 佳世
1
H. Tanaka
1
,
K. Tanaka
1
1三重大学産科婦人科
pp.1121-1125
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002731
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ホスホジエステラーゼ(PDE)は,基質特異性,反応速度,活性制御因子,阻害薬に対する感受性,および遺伝子の塩基配列の相同性から,11のファミリーに分類されている。そのなかで,生殖器に発現しているPDEファミリーの1つがPDE5である。PDE5阻害薬は,細胞内のPDE5がもつcGMPのGTPへの加水分解を律速する作用を抑制し,NOによる血管拡張を持続・増強する。胎盤機能不全は胎児-胎盤の循環不全が背景にあるため,PDE5阻害薬の血管拡張作用を応用して,胎盤機能不全に対する治療が試みられてきた。具体的には,胎盤形成不全による胎盤機能不全(胎児発育不全に投与)や妊娠後期の胎盤機能不全(分娩中に投与)である。PDE5阻害薬がヒトの胎盤機能不全に対して,本当に効果があり,実用化されるかについては,今後の臨床試験の結果を見定める必要がある。
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