特集 エストロゲン依存性疾患の診療ストラテジー
企画者のことば
谷口 文紀
1
Fuminori Taniguchi
1
1鳥取大学医学部産科婦人科学分野(教授)
発行日 2023年10月1日
Published Date 2023/10/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002692
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少子晩婚化に伴い,生涯に経験する月経回数が増加し,エストロゲン依存性疾患である子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症,子宮体がん,乳がんの罹患率増加と管理の重要性がクローズアップされています。これらの疾患は,リプロダクションと社会生活の両面において女性の人生に大きな影響を及ぼし,さらには治療が多様化したことにより,対応が複雑になっています。特に,2022年より保険適用となった生殖補助医療により,これらの疾患を合併しながら,または治療後に妊娠する女性が急増していることからも,妊孕能温存を考慮した管理ならびに周産期合併症発生率の低下が喫緊の課題となっています。また,ホルモン療法の効果は永続的でないことから,治療終了後の再発・再燃が臨床上問題となることも多く,長期のエストロゲン低下に起因する骨粗鬆症や虚血性心疾患への影響も指摘されています。現在,様々な国内外の診療ガイドラインや取扱い規約を手にすることができるものの,思春期月経困難症への早期介入の問題は未解決であり,ホルモン製剤の応用による,あるいは新しい手術器機を用いた保存的治療法は多岐にわたり,悪性疾患に関しては,子宮体がんにおける妊孕性温存ホルモン療法,がんサバイバーへのホルモン補充療法,妊娠関連乳がんの管理などの治療法も改良がみられることから,いま一度その整理が必要であると考えました。
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