特集 子宮収縮抑制薬の長期投与はやめられるのか?―切迫早産管理のエビデンスと実践―
企画者のことば
松村 謙臣
1
,
川﨑 薫
1
,
森内 芳
1
,
葉 宜慧
1
Noriomi Matsumura
1
,
Kaoru Kawasaki
1
,
Kaori Moriuchi
1
,
Yoshie Yo
1
1近畿大学医学部産科婦人科学教室
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002192
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以前より,わが国では切迫早産に対して入院安静のうえでリトドリン塩酸塩や硫酸マグネシウムを長期間投与する診療が一般に行われてきた。その背景として,わが国には国民皆保険制度があること,および人口あたりの病床数が諸外国に比して非常に多いことが挙げられる。しかしそのような切迫早産の管理方法は,海外で行われた臨床試験において有効性が証明されず,欧米では48時間以内の持続点滴投与法が行われている。そしてわが国の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2020」では,「子宮収縮抑制薬を投与する際は有害事象に注意し,症状が軽快したら減量や中止を検討する(C)」とされ,その解説文には,「急性期を経て48時間以上の持続点滴投与,あるいは持続点滴投与中止後に経口投与を継続する場合には,減量・中止の可否も検討したうえで選択されることが望ましい」と書かれている。そこで,これまでの切迫早産の管理方法を変更しようとしてリトドリン塩酸塩の早期中止を試みた結果,やはり子宮収縮が増強して中止できず,結局これまでの治療法を変えられないでいるケースも多いと思われる。
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