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AI時代の整形外科医
竹上 靖彦
1
Yasuhiko TAKEGAMI
1
1名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻,バイオメディカルイメージング情報科学
pp.299-299
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000003742
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医師になって3年目,へき地の病院の医局の窓からは,ぐるりと杉林の山々だけが見えていました。半径60km圏内に整形外科医は自分ひとり。頼れる同僚も指導医もおらず,インターネット回線も貧弱なISDNのみ。当然,生成AIなど想像もできない時代です。当時の私は,「精一杯生きる」とは「知識と手技を総動員して,病気を治すこと」だと信じていました。しかし,専門外である脳腫瘍の患者さんを,BSC(ベスト・サポーティブ・ケア)で診るなかで,その信念は揺らぎました。私にできたのは,麻痺やそのほかの症状に戸惑う患者さんや家族の「怖さ」や,「人生の心残り」に,ただ耳を傾けることだけでした。医学的には無力な時間だったかもしれません。それでもご家族からいただいた「最期まで父の人生を聞いてくれてありがとう」という言葉は,私の医師としての原点になりました。
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