誌説
AI時代の整形外科医道
竹上 靖彦
1
1名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻バイオメディカルイメージング情報科学教授
pp.1080-1080
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_1080
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近年の人工知能(AI)技術の急速な発展は,従来の医療のあり方に変革をもたらしつつあります.整形外科領域においても,深層学習モデルは骨折の有無の判定にとどまらず,股関節CTからの正確な骨密度推定や,MRIのような複雑な画像所見における大腿骨頭壊死病巣の三次元的抽出と重症度の自動判定を可能とするレベルに到達しました.特に2022年のChatGPTの公開以降,生成AIの進化は著しく,医学生・研修医の教育支援,研究計画の立案補助など,その活用範囲は拡大の一途をたどり,英語論文の瞬時な要約機能は従来の抄読会の様相をもかえつつあります.研究計画立案においては,研究仮説を入力することでAIが最新文献を自動的にマッピングし,既存エビデンスのギャップを可視化,さらには適切な統計手法や必要サンプルサイズを提案するまでになっています.一般診療においても,症例情報の入力により最新のガイドラインに準拠した診療方針案を提示するなど,その応用範囲は急速に拡大しています.これらは,医師に思考時間をもたらすと同時に診療の質と速度を向上させる “知的ブースター” として機能し,今後の整形外科を含む医療分野において,AIなしの診療や研究は想定しがたい状況です.
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