XR（拡張現実）の臨床応用 -―VRからメタバースまで―

Clinical applications of XR（extended reality）；from VR to the metaverse

要旨：専門医の地域偏在がもたらす医療格差や，複雑化する医療技術の効率的な習得は，現代医療が直面する喫緊の課題である。その解決法として，仮想現実（VR）や拡張現実（AR）などを含むXR技術や，その上位概念であるメタバースが注目されている。世界では，リスクフリーなVR手術訓練，VR⊘ARを用いた没入型の解剖学教育による理解深化，精神科でのVR暴露療法，VRを用いた運動器リハビリテーションなどが実用化されてきている。われわれは，地理的制約や希少性から特に孤立しがちな希少がん患者を対象に，メタバースを用いたピアサポートを実施しており，患者のウェルビーイングの向上を図っている。医療におけるこれらの技術の活用は，データセキュリティや法整備なども含め，乗り越えるべき課題は大きいが，その先には，医療の質の向上と，個々の患者に最適化された医療を実現する未来が拓ける可能性がある。