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これからはOrthogeriatric
澤口 毅
1
Takeshi SAWAGUCHI
1
1富山市民病院,整形外科・関節再建外科
pp.1-1
発行日 2020年1月1日
Published Date 2020/1/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000001142
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いまさらいうまでもないが,わが国は急速な人口の高齢化を迎えており,令和元年版高齢社会白書によれば2018年の65歳以上人口の割合は28.1%,2036年には33.3%,2065年には38.4%と推定されている。地方ではその傾向がさらに強く,わが富山県では2017年で既に31.6%,2045年には40.3%と推定されている。そのため骨折はもちろんのこと,関節疾患,脊椎疾患など整形外科のほとんどの分野で治療対象は高齢者となっている。骨折ではかつての高エネルギー損傷は著しく減少し,骨粗鬆症を基盤とする高齢者骨折が大部分を占めるようになった。なかでも大腿骨近位部骨折は,年間約20万例発生しており,今後さらに増加すると推定されており,common fractureといえる状態である。日整会の調査では,その発生年齢は年々高齢化しており,80歳以上の増加が著しく,100歳以上の患者も少なくない。多くの一般病院では,大腿骨近位部骨折が整形外科全手術症例の15~20%を占めるようになっており,今後さらに増加すると,他の手術を圧迫することが懸念される。また高齢者は,単に骨折を起こしただけではなく,中枢神経障害,心肺機能低下,代謝障害,腎機能低下,免疫能低下やサルコペニアなど多くの疾患を抱え,単に骨折を治療するだけでは済まず,整形外科医だけでの治療には限界がある。そのため多職種が連携した早期手術,周術期管理,二次骨折予防が不可欠である。特に内科医,老年病医の協力は非常に重要で,欧米では既に高齢者骨折を診療対象とした整形外科老年病医(Orthogeriatrician)が病棟に常駐し,高齢者骨折の管理を行っている。
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