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冠動脈疾患は先進国で罹患率が多く死亡率の高い疾患であり,予後改善のため早期発見,診断,治療が極めて重要な疾患である。心臓CTはこの15年でCT機器ならびに撮影技術が飛躍的に改善され,冠動脈疾患が疑われる患者を対象とした2つのランダム化比較試験(従来の虚血検査と比較し心臓CTの非劣勢を示したPROMISE試験1)や,運動負荷試験を使用した標準診断戦略と比較し心臓CTが有意にイベント率の低下を示したSCOT-HEART試験2)3)をはじめ,心臓CTの臨床使用における有用性を示した多くの研究が発表された。これらの研究の結果に基づき,近年日本循環器学会の安定狭心症のガイドラインならびに米国の胸痛ガイドラインが改訂され,冠動脈疾患中等度リスク患者に対する心臓CTの使用は世界中のガイドラインで虚血性心疾患の診断戦略の第一選択として位置づけられた4-6)。最近の多施設研究の結果でもあらためて心臓CTの高い診断能が報告され7)8),その使用は今後ますます広がっていくものと考えられる。しかし,心臓CTの検査結果に対する解釈は検査依頼医にゆだねられており,必ずしもエビデンスが臨床に反映されていないことが問題となっている。例えば,心臓CT施行後の心臓カテーテル検査や冠血行再建術の増加が以前より懸念されており,その傾向は特に欧米に比べ日本のほうが顕著であるといわれている9)。不必要な検査や治療は手技による合併症をもたらすだけでなく,医療費の増大に影響を及ぼす可能性がある。一方で,先述したSCOT-HEART試験は,心臓CT後のスタチンやアスピリンなどの冠動脈疾患予防薬の服用増加が心血管イベントの低下をもたらすことを明らかにした10)。すなわち,心臓CT画像診断に基づく内服薬強化は予後改善や冠動脈疾患の一次・二次予防の推進にもつながると考えられ,さらに臨床応用を進めていく必要がある。
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