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血管肉腫は,血管内皮細胞から生じるまれな悪性腫瘍であり,軟部肉腫全体の約2%を占める1)。その半分以上は頭頸部に発生し,特に頭部の皮膚にみられることが多い。とりわけ頭皮の血管肉腫は悪性度が高く,急速に進行し,早い時期から肺を中心に遠隔転移を高率に引き起こす。そのため,予後は不良で,5 年の無病生存率は20%以下と報告されている2)3)。根治治療として手術が行われるが,腫瘍の境界が不明瞭で,娘病変を伴うことも多く,局所再発が頻繁にみられる。また,高齢者に多いという特徴もあって,手術不能な症例も少なくない。これらの症例には,放射線治療が適応となるが,近年,パクリタキセルやドセタキセルといったタキサン系の薬剤を中心とした化学療法が有効との報告が相次ぎ,積極的に化学放射線療法が選択されるようになってきた4)5)。また,インターロイキン2 を使った免疫療法や,最近はパゾパニブなどの分子標的薬も保険適用となり,効果が期待できる薬剤の種類も増えつつある。そのため,なかには腫瘍のサイズが大きい,あるいは境界が不明瞭など,術後再発のリスクが高いケースには,初期治療として手術ではなく,放射線とこれら薬剤の併用療法が選択される場合もある。 肉腫と聞くと放射線治療抵抗性の腫瘍をイメージしがちだが,頭皮の血管肉腫は比較的放射線感受性が高く,良好な一次効果が得られることが多い。そのため,最近作成された日本皮膚科学会の頭部血管肉腫診療ガイドラインにも,推奨される根治治療として放射線治療が掲載されている6)。しかしながら,まだその報告例は限られており,標準的な照射法は確立していない。そこで本稿では,頭皮血管肉腫の放射線治療について,自験例を含めながら,その方法や治療成績について解説する。
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