- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
右側結腸癌に対する中枢側郭清は,出血やリンパ漏など合併症を引き起こすリスクがあるため,上腸間膜静脈(superior mesenteric vein;SMV)左縁までの郭清にとどめている施設が多い。しかし,大腸癌取扱い規約で定義されている「上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)系のリンパ節分類」の主リンパ節を郭清するためには,SMA左縁までの郭清が必要である。われわれは,『胃癌手術の膵上縁郭清における総肝動脈・脾動脈・左胃動脈周囲の厚い神経線維の層とその外側にあるoutermost layerとよばれる至適な剝離可能層に沿った郭清手技(outermost layer-oriented surgery)』のコンセプトを応用して,SMA周囲を取り囲む神経叢の外側(the outermost layer of the autonomic nerve)に沿って,その腹側にあるリンパ節を含む脂肪組織をSMA左縁まで郭清している。この手技では,約1 cmの幅でSMA前面(の神経叢)が露出され,①回結腸動脈(ileocolic artery;ICA)・右結腸動脈(right colic artery;RCA)がSMA腹側から分岐する場合のその根部,②中結腸動脈(middle colic artery;MCA)の根部,③(存在する場合は)SMAを腹側に横切る空腸動脈,を直視できるようになる。それにより,ICA,RCA,MCAの根部にある主リンパ節の十分な郭清が可能となり,また,血管走行を根部から視認することで予期せぬ出血のリスクを最小化できる。また,特筆すべきことに,このoutermost layerの剝離層(つまり,SMA神経叢は温存する層)で手術を行えば,乳び腹水や難治性下痢といった術後合併症は起こらない。
Copyright © 2024, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.