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特集 小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩
Ⅲ 近視
9 小児の病的近視の診断と管理
Diagnosis and treatment of high myopia in childhood
五十嵐 多恵
1
Igarashi-Yokoi Tae
1
1東京都立広尾病院眼科(東京都)
キーワード:
小児の強度近視
,
遺伝性網膜ジストロフィ
,
結合組織疾患
,
視神経乳頭周囲びまん性萎縮病変
,
後部ぶどう腫
Keyword:
小児の強度近視
,
遺伝性網膜ジストロフィ
,
結合組織疾患
,
視神経乳頭周囲びまん性萎縮病変
,
後部ぶどう腫
pp.966-972
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004308
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はじめに
近視が強度で病的であるほどMendel遺伝疾患やまれで影響力の大きい遺伝子変異が関与する傾向が知られており,幼少期からの早期発症強度近視患者には,遺伝要因が近視発症の主因と考えられる患者の割合が高い。オランダでは2020年ごろから保険診療で強度近視患者に遺伝子スクリーニングが提供されており,約20%の患者に病的変異が同定されている1)。頻度が高い順に,さまざまな遺伝性網膜ジストロフィ(IRD),次いでStickler症候群などのコラーゲン形成異常を伴う結合組織疾患が挙げられる。対象を早期発症強度近視に絞った中国の報告では,同定率は6割近くに達している2)。本邦でも自由診療で遺伝子スクリーニングを提供する体制を整備する施設もあるが,費用も高額で,基本的には画像検査などを駆使して臨床的に鑑別する。IRDや結合組織疾患の素因がない場合でも,早期発症強度近視から病的近視を鑑別し,適切な合併症管理に結びつけることは,病的近視患者が生涯にわたり良好な視機能を維持するうえで重要である。眼底写真で視神経乳頭周囲のびまん性萎縮の有無を確認し,脈絡膜厚をモニタリングすること,広角OCTを用いて後部ぶどう腫の初期病変を同定することは,病的近視の早期診断のために有用な指標と考えらえる。

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