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萎縮型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は,慢性進行性の網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)の萎縮拡大を特徴とする疾患である。眼底所見の特徴としてはドルーゼンもしくは網膜色素上皮剥離を含むRPE異常に続発するRPE萎縮の拡大であり,進行すると中心視力の喪失につながる1)。以前より,組織学的検討などから黄斑部のRPEやBruch膜の構造の加齢に伴う変化や眼血流の変化などがAMDの発症と関連しているとされていた2)。さらに,病理学的検討から,ドルーゼンの形成,リポフスチンの蓄積,酸化ストレス,局所炎症,および反応性グリオーシスなどが,萎縮型AMDの病因に関与するプロセスであるとみられている。それと同時に,遺伝的要因としてCFH遺伝子とARMS2/HTRA1遺伝子の大きな影響が報告されて以来,50以上の感受性遺伝子座が同定されている1)。これらの疾患感受性遺伝子座の遺伝統計解析により炎症,補体,脂質および細胞外マトリックスの代謝分解などの各種経路の調節不全が,萎縮型AMDの主たる病因に関与していると考えられている。このようして,萎縮型AMDの複合的な病態が明らかとなりつつある現在,病態関連経路を修飾する治療薬が開発されている。なかでも,炎症経路は損傷からの自己防衛や調節の機構としても機能しているが,過剰に活性化されると,Bruch膜における炎症性分子の生成,マクロファージの動員,補体活性化,マイクログリア活性化などのプロセスを介して,脈絡膜新生血管と地図状萎縮(GA)の両方の発症に寄与し,病態を進行させると考えられる3)。このような知見をもとに開発が進められた補体経路阻害薬の開発の成功は,AMDの分子遺伝学的研究の成果として特筆すべきものである。そしてさらに,現在も多くの製薬企業が治療薬の開発にしのぎを削っている。萎縮型AMDの病因は多面的であり,さまざまな生物学的経路が関与している(図1)が,本稿では,萎縮型AMDの病態学説のなかから,臨床的・分子遺伝学的に広く受け入れられている事項について述べる。
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