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帝京大学医学部附属病院(以下,当院)では細菌性眼内炎に対し,病院院内製剤(以下,院内製剤)として1%バンコマイシン(vancomycin:VCM)点眼液を調製している。当院では眼刺激性を軽減する目的でVCM点眼液を生理食塩液のみで溶解し調製している。これまでに,防腐剤を含有したVCM点眼液の薬剤学的安定性と臨床効果が報告されているものの,生理食塩液のみで調製した際の安定性試験を行った報告は少ない。そこで本研究では,生理食塩液で調製した1% VCM点眼液の薬剤学的安定性の検討を行った。また,細菌性眼内炎への臨床効果について検討した。
安定性試験では,1% VCM点眼液を5℃および20℃で56日間保存し,VCM含量,pH,浸透圧を測定した。また,培養検査により微生物汚染の有無を評価した。臨床効果については当院で細菌性眼内炎が疑われた53歳から79歳までの患者について1% VCM点眼液を使用後に眼科的臨床検査および有害事象等で評価した。
1% VCM点眼液を5℃および20℃で遮光保存した際のVCM含量,pH,浸透圧では56日間変化は認められずほぼ一定に保たれていた。また,培養検査では細菌は検出されなかった。1% VCM点眼液を使用した5例8眼すべてにおいて有害事象は認められなかった。また,患者5例8眼において硝子体切除術を施行しなかった2例3眼では改善が認められなかったが,硝子体切除術を併用し眼内および点眼によりVCM投与を行った4例5眼では眼内炎が改善され,再燃を認めなかった。本研究結果から当院で調製している1% VCM点眼液は薬学的に極めて安定であり,臨床的にも眼内炎の改善を認めかつ有害事象が発現しなかったことから,細菌性眼内炎において有効かつ安全な院内製剤であると考えられる。
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