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中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)はpachychoroid syndromeの最も代表的かつ根本的な疾患であり,中心窩下に漿液性網膜剥離が生じることが特徴的である。Pachychoroidの病態は,近年のマルチモーダルイメージングの発達によって徐々に解明されつつあり,非対称拡張渦静脈などに示されるように脈絡膜血流のうっ滞がその病態に関与することがわかってきた。近年Spaideらは,これら一連の疾患群についてpachychoroidの最も特徴的な所見は脈絡膜静脈の拡張であるとして,pachychoroid syndromeの疾患に対してvenous overload choroidopathyという名称を推奨している1)。ここでいうoverloadとはうっ滞と同義であろうか? overload(過負荷)という言葉は辞書を引くと「to put too many things or people on or into something」とある。つまり,この言葉通りに受け取るとoverloadは単純なうっ滞を指す言葉ではなく流入と排出のバランスの上に成り立つ言葉であるといえる。Pachychoroidについて考える際には,overloadの一側面である排出障害(うっ滞)だけでなく,もうひとつの側面である流入過多(過灌流)についても考える必要はないだろうか。我々はこれまでのlaser speckle flowgraphy(LSFG)を用いた研究で,急性期のCSCで脈絡膜血流が増加しているという結果を報告した。これは,奇しくも高い血圧により脈絡膜血流が増加するであろうことが推察される高血圧脈絡膜症(hypertensive choroidopathy:HTC)とよく類似した結果であった。本稿では,急性期のCSCとHTCにおける脈絡膜血流の過灌流を示唆する我々の報告を過去の知見と照らし合わせ,その病態を推察する。
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