綜説
白内障周術期感染予防update
松浦 一貴
1
1野島病院眼科(倉吉市)
キーワード:
白内障手術
,
術前点眼
,
術後点眼
,
前房内投与
,
術中ヨード
,
術後眼内炎
Keyword:
白内障手術
,
術前点眼
,
術後点眼
,
前房内投与
,
術中ヨード
,
術後眼内炎
pp.1171-1178
発行日 2021年12月5日
Published Date 2021/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002366
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2010年当時,感染予防の主役は術後点眼であった。術野に取り残された菌の増殖は6~8時間で始まるが,点眼の開始は翌朝になることが普通であった。また,キノロンを頻回点眼した場合でさえ眼内に移行する濃度は点眼液の0.1%にも満たないため,多くの起因菌の有効濃度に達しない。すなわち,我々が頼りにしていた“術後点眼”は,“遅すぎる”だけでなく,“薄すぎる”のであった。鳥取大学の伝統として,何の疑いもなく引き継いだ感染対策のもとで眼内炎を経験し,その後2021年までの11年間をかけて自らの感染予防をupdateしてきた(表1)。片眼手術に対して2010年では概算で1.95gの抗菌薬を用いていたが,2021年では0.012gと160分の1に減少した。また,抗菌薬の投与期間は63日から4日へと約16分の1に減少した。昨今,耐性菌(AMR)対策として抗菌薬の使用を減らすことが叫ばれているが,我々の研究は抗菌薬を減らすことを目的としてはいなかった。理に適った効果的な感染予防を目指した結果として,抗菌薬は自ずと激減したのである。本稿では,その理論的根拠を述べる。
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