連載 先生,そのエビデンス教えてください!
第2回
手術室の入室人数は手術部位感染症にどのような影響がありますか?
小沼 賢治
1
1北里大学整形外科学講師
pp.206-207
発行日 2022年2月19日
Published Date 2022/2/19
DOI https://doi.org/10.18885/JJS.0000000896
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手術部位感染症(surgical site infection;SSI)は,死亡率増加や入院期間の延長にもかかわるため,医療費の抑制のためにも予防対策は重要です。特に,人工関節を扱う整形外科手術ではSSIを合併すると患者個人の身体的,経済的な負担も大きくなります。SSIに関連するリスク因子として,患者因子,微生物因子,手術因子があります。このうち,宿主患者の抵抗力が患者因子であり,術野を汚染する微生物の量と毒性が微生物因子です。手術因子は,医療者側がもたらす因子となりますが,対策をすることで,SSIリスクを減らすことができます。SSI予防のための米国疾病予防管理センター(centers for disease control and prevention;CDC)ガイドライン1)が1999年に発表され,その後,新たなSSI防止対策も日々研究され開発されています。CDCガイドラインが示すSSIリスク因子を表1に示します。表1中の「手術室の換気」に関する項目では,手術室の在室者の動きがSSIリスクとなること,手術室の空気には,SSIに関与する微生物を含有する粉塵,術衣やリネンから発生する「糸くず」,皮膚の落屑,呼吸器飛沫が含まれている可能性があること,手術室の空気中の微生物レベルは,部屋の中を動き回る人の数が増えるほど増加すること,A群β溶連菌によって引き起こされたSSIの発生が,手術室のスタッフから患者への微生物の空中伝播に起因しており,発生の原因となった菌株が手術室の空気からも回収されたことが記載されています。従って,SSI対策では,手術中の人数や移動を最小限に抑えるように努力する必要があります。
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