特集 Onco-Cardiologyの新展開
識る 癌化学療法における薬剤性心筋症
岡 亨
1
1大阪府立病院機構大阪国際がんセンター 成人病ドック科・腫瘍循環器科
キーワード:
DNA損傷
,
Protein-Tyrosine Kinases
,
活性酸素
,
抗腫瘍剤
,
腫瘍
,
心筋疾患
,
心臓ミトコンドリア
,
Anthracyclines
,
Trastuzumab
,
Protein Kinase Inhibitors
,
DNA Topoisomerase II Beta
Keyword:
Trastuzumab
,
Antineoplastic Agents
,
DNA Damage
,
Cardiomyopathies
,
Mitochondria, Heart
,
Neoplasms
,
Protein-Tyrosine Kinases
,
Reactive Oxygen Species
,
Anthracyclines
,
Protein Kinase Inhibitors
pp.110-116
発行日 2018年2月9日
Published Date 2018/2/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2018122102
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アントラサイクリン系抗癌剤は1963年の登場以来、殺細胞性の抗癌剤として広く用いられてきたが、用量依存的に心筋障害が発生するため、その使用には制限が伴う。一方、近年開発が盛んな分子標的薬による癌化学療法では標的分子は明らかであるが、心臓の機能維持にも重要な役割を果たしている上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)/ヒト上皮増殖因子受容体2型(human epidermal growth factor receptor type 2:HER 2)シグナルや血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth facto:VEGF)シグナルが標的となっており、心臓が直接影響を受ける可能性が高く、薬剤性心筋症の発症に注意が必要である。心血管毒性の発症リスクにもかかわらず、すでにこれらの抗癌剤を用いた化学療法は癌治療に欠くことのできない治療法となっており、抗癌作用を最大限に引き出したうえで、より安全に使用するために、わが国における腫瘍循環器の臨床的なデータの蓄積とともに、心血管毒性の発症機序のさらなる解明が必要である。心筋障害をもたらす機序は複雑であり、いまだに研究途上であるが、本稿では、アントラサイクリン系抗癌剤による心筋障害とトラスツズマブによる心機能低下の発症メカニズムを中心に紹介する。
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