特集 心筋性状・機能診断を考える-病理と画像が意味するもの-
識る 病態を理解するための知識 質量顕微鏡 心筋疾患を別角度から分析する
尾上 健児
1
1奈良県立医科大学 第1内科
キーワード:
Arachidonic Acid
,
Cholesterol Esters
,
Famotidine
,
Phosphatidylcholines
,
顕微鏡検査法
,
心筋疾患
,
動脈硬化症
,
薬物動態学
,
MALD質量分析
,
Globotriaosylceramide
,
心Fabry病
Keyword:
Cholesterol Esters
,
Arteriosclerosis
,
Cardiomyopathies
,
Microscopy
,
Phosphatidylcholines
,
Pharmacokinetics
,
Famotidine
,
Arachidonic Acid
,
Spectrometry, Mass, Matrix-Assisted Laser Desorption-Ionization
,
Globotriaosylceramide
,
Fabry Disease, Cardiac Variant
pp.961-966
発行日 2017年9月9日
Published Date 2017/9/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017373896
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
16世紀末オランダで光学顕微鏡が発明され,19世紀半ばVirchowにより細胞病理学の基礎が築かれて以来,心筋疾患をはじめとした病理学はマクロからミクロの時代に入り,疾病の病態把握・診断・治療に多大な貢献を果たしてきた。20世紀前半には,光に代わり電子線を照射して組織を観察する電子顕微鏡が開発され,組織形態をより微細に観察することが可能となった。また,抗原抗体反応を用いた免疫組織化学技術の進歩により,組織の識別は単に形態のみでなく,分子レベルでも行えるようになった。これらの技術革新が医学・医療にもたらした恩恵は計り知れないものがあることはいうまでもないが,光学顕微鏡・電子顕微鏡の観察はあくまで基本的には形態観察の技術であり形態学的に識別不能な物質の場合,また免疫組織化学は既知物質に対しては有効であるが未知物質や想定外の物質の場合,それらを観察・同定するには限界があった。本稿で紹介する質量顕微鏡法は,生化学や環境科学分野などで用いられてきた質量分析法を基に近年開発されたもので,顕微鏡で観察している組織そのものを質量分析により解析することで,位置情報を保ったまま組織内に存在する物質を同定できる技術である。本稿では質量顕微鏡法の原理,方法および利用例を提示し解説を行う。
Copyright© 2017 MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.