- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
特に既往のない60 歳代,男性。動悸,呼吸困難を自覚するようになり徐々に増悪したため前医を受診。心電図にて持続性の心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)が記録された。リドカイン静注にて洞調律に回復後,原因精査のため冠動脈造影が行われた。左前下行枝#7 に50 〜75%狭窄を認めたため,同部位に冠動脈形成術が行われステントが留置された。アミオダロンの内服が開始されたが3 日後,再びVT が出現したため精査,加療目的で当院へ転院となった。 入院時血液検査は異常所見を認めなかった。胸部単純X 線写真,心電図を図1 に示す。入院時心電図は洞調律房室伝導障害や脚ブロックは認められなかった。VT は左脚ブロック型,上方軸で右室起源が疑われた。心エコー図検査は左室拡張末期径 50mm,左室収縮末期径 40mm,左室駆出率50%,明らかな局所壁運動異常を認めない。そのほかに弁膜症や構造的異常も認められなかった。 入院後経過 心臓電気生理検査およびアブレーションを行った。カテーテル操作により前医で認められたVT が誘発されたが(VT1),薬物療法の影響か持続はしなかった。そこで洞調律中に右室内のmapping を行った。右室下壁中隔で心室遅延電位が記録され,同部位でのpacemap はVT1に一致したため同部位でアブレーションを行った。アブレーション後VT 誘発を試みたところ,VT1 とは異なるVT2 が誘発された。右脚ブロック,上方軸で血行動態が破綻したため,電気的除細動にて洞調律に回復させた。左室起源が疑われたため,左室内mapping を行ったが,心腔内エコー(CARTOSOUND®:Biosense Webster Inc.)を用いて左室内を確認したところ,複数の小さな心室瘤が認められた。右室アブレーション部位の対側にあたる左室下壁中隔の瘤内でmapping を行うと遅延電位を認めたため,同部位でもアブレーションを追加した。その後,左室前中隔の心室瘤内にも心室遅延電位が認められ,同部位でのpacemap はVT2 に一致した。この周辺で遅延電位を指標に高周波通電を施行し,VT は誘発不能となった。 多発する心室瘤を認め,VT を合併していることから,心サルコイドーシスを疑い精密検査を行ったが,血清学的検査で異常なく(ACE 15.5IU/L,リゾチーム 7.6mcg/mL),ガリウムシンチグラフィでも異常集積は認められなかった。しかし,右室中隔からの心筋生検で乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が明らかとなり,心サルコイドーシスの確定診断に至った。心臓MRI では下壁および前壁中隔を中心に複数の小さな瘤と遅延造影所見が認められた。心サルコイドーシスに伴う持続性VT であり,植込み型除細動器(implantable cardioverter defi brillator:ICD)の適応と判断し,植込み術後にアミオダロンの内服を継続し退院となった。また後日行ったFDGPET/CT でも同部位に集積を認めたため活動性の心サルコイドーシスと診断し,再入院のうえプレドニゾロン30mg から内服を開始し漸減,外来で10mg を維持内服とした。
Copyright © 2020, MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.