特集 失神患者が来たら!原因を探り,サインを見逃さず,診断・治療を確定する
診る1
失神ガイドラインの診断フローチャートを熟考する
小林 洋一
1
1昭和大学医療安全管理部門特任教授
キーワード:
TLOC
,
Reflex syncope
,
Cardiac syncope
,
OH
,
Risk stratification
Keyword:
TLOC
,
Reflex syncope
,
Cardiac syncope
,
OH
,
Risk stratification
pp.104-110
発行日 2020年2月9日
Published Date 2020/2/9
DOI https://doi.org/10.18885/HV.0000000132
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失神は,突然死を生じる疾患群において重症度の判定に用いられてきた。このことから,原因診断の正確性がより重要となってきている。しかし,失神は予後良好の反射性失神から予後不良の心原性失神までスペクトラムが広いため,失神の原因を明らかにして判定しないとその重症度をミスリーディングする可能性が高い。例えば,Brugada症候群やJ 波症候群に合併する失神である1,2)。前者の植込み型除細動器(ICD)の適応に関し,「失神」,「突然死の家族歴」,「電気生理検査における心室細動」のうち2つを有していればクラスⅡa のICD 適応とされている。近年,Brugada 症候群に合併する失神は,心原性失神ばかりでなく反射性失神の合併も多いことが判明してきており,電気生理検査における心室細動の誘発も特異度が乏しいことも知られている。つまり,上記のうち2つを基準にして必要のないICD の植込みを受ける可能性もある。幸いなことに,医療機器の進歩は植込み型ループレコーダの小型化を可能にし,体外式ループレコーダの記録時間も伸びてきている。また,ヘッドアップチルト試験は感受性・特異度に問題を抱えていて時間も労力も必要なために敬遠されがちであるが,反射性失神以外の原因のなかにも反射の関与が疑われる所見があるため,末梢血管抵抗の低下を明らかにする意味でもその有用性を今一度認識する必要もある。本稿では上記のような,ガイドラインの診断フローチャートに潜む問題点を熟考してみたい。
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