連載 整形外科医療・機器開発秘話
臨床現場の課題から始まったAqualaライナー実用化にいたる経緯
茂呂 徹
1
1東京大学大学院医学系研究科関節機能再建学講座特任教授
キーワード:
THA
,
poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)[PMPC]
,
artificial hip joint
,
osteolysis
,
aseptic loosening
Keyword:
THA
,
poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)[PMPC]
,
artificial hip joint
,
osteolysis
,
aseptic loosening
pp.873-877
発行日 2026年7月1日
Published Date 2026/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei77_873
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はじめに:関節軟骨表面の模倣という発想から生まれた人工股関節ライナー
Aquala(アクアラ)は,高度架橋ポリエチレン(HXLPE)製人工股関節ライナーの関節摺動表面に,生体親和性の高い親水性高分子であるpoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)[PMPC]を導入することで,生体関節に近い潤滑環境を構築し,非感染性の弛みの抑制による人工股関節の長寿命化をめざして開発された医療機器である1,2).従来の人工股関節が主として材料強度や耐摩耗性の向上によって進化してきたのに対し,Aqualaは「生体親和性」および「潤滑」という異なる視点を取り入れた点に特徴がある.
Aqualaは2011年に実用化され,現在までに国内で11万件を超える手術に使用されている.筆者は本ライナーの開発チームの一員として,1998年の発案段階から,基礎研究,企業との共同開発,社会実装,さらには市販後の臨床研究にいたるまで一貫して関与してきた.
本稿では「整形外科医療・機器開発秘話」という企画趣旨をふまえ,詳細な技術的解説は既報に委ねつつ,学会発表や論文では十分にお伝えできなかった,臨床現場での気づきと判断の過程に焦点をあてて紹介したい.

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