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は じ め に
拡張現実(augmented reality:AR)は,現実空間において視覚,聴覚などの感覚に与えられる情報の一部にデジタル情報を重ねて拡張する技術である.近年,医療臨床現場においてもさまざまな分野で手術支援として用いた報告があげられている.たとえば,消化器外科手術領域では肝切除術の術前シミュレーションとして肝臓や腫瘍,血管などの三次元画像構築を行い,術中に術野をカメラで撮影し,その場所と角度に一致した三次元画像をタブレットに表示し手術を行っている.ARを用いることにより,滅菌術野で臓器の奥行きや立体関係,病変の広がりや切除範囲を複数医師間で術中空間位置の共有を行うことも可能である.脳神経外科手術領域では腫瘍や血腫などの病変や脳室,静脈洞などの重要構造を患者の頭上に3Dホログラフとして表示させ,教育的に使用することが可能となっている1~3).
整形外科領域においてもARの応用に対する関心は高まっている.術前・術中に医療画像などの視覚データが頻繁に使用され,技術的な面におけるARの有用性が注目されている4).人工股関節全置換術においてスマートフォンにあらかじめマーカーと呼ばれる画像を登録し,スマートフォンのカメラで術野を映すことで,マーカーとの位置関係から骨盤基準面に対するカップの設置角度を作成することができる.また,モニター越しではあるが,術野に骨盤や血管,筋肉などの三次元画像を重ねて表示することが可能な機種もある5).
当院でも手術顕微鏡とナビゲーションをリンクさせたAR顕微鏡を,脊髄腫瘍摘出術をはじめとした各種脊椎手術に使用してきた.また,ARナビゲーションと顕微鏡を併用することにより術者間での情報共有が容易になり,手術手技教育にも適している.当院ではAR顕微鏡を用いて専攻医の椎弓根スクリュー挿入の手技教育を行っている.手技教育目的のAR顕微鏡技術についての若干の文献的考察を交え,AR顕微鏡を利用したスクリュー挿入の1例(症例1)と従来のX線透視下でのスクリュー挿入の1例(症例2)を報告する.

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