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はじめに
現在,X線透視は整形外科診療において広く用いられており,骨折や脱臼の整復操作,脊髄造影や神経根ブロック,また骨折接合術,脊椎手術,人工関節手術などにおいても主たる術中画像支援としての役割を担っている.X線透視は,脊柱変形など複雑なインストゥルメンテーション手術や,肉眼ではオリエンテーションをつけることが難しい最小侵襲脊椎治療(minimally invasive spinal treatment:MIST)に有用である9).しかしながら,X線透視による医療従事者の放射線被曝の問題も懸念されている4).職業被曝の限度は,国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection:ICRP)の指針に定められている8).医療従事者では,急性放射線障害による健康被害の危険性は少ないが,長年の累積被曝による慢性放射線障害や晩発性の放射線障害が問題となる.累積被曝によるDNA障害では,細胞障害性や発がん性の可能性が報告されており2,14),爪甲色素線条6),放射線白内障16),また整形外科医に女児が多いこと7)なども報告されている.術中CTナビゲーションは,脊椎インストゥルメンテーション手術の安全性の向上のほか,術者の被曝低減においても有用である12).しかしながら,導入コストや手術室の配置などの問題からすべての施設に導入することは難しいのが現状である.
近年,術中画像支援としてextended reality(XR)と総称されるvirtual reality(VR,仮想現実),augmented reality(AR,拡張現実),mixed reality(MR,複合現実)などの新たな画像技術の応用が試みられている1,5,9,11,15).XRは,ゲーム産業で社会的認知度が高まったが,医療業界においても注目されており,2026年の医療関連XRの国内市場は約342億円の急成長が予測されている.VRは,CTで撮像した臓器や血管,骨軟部組織などをヘッドマウントディスプレイ上に3D画像で映し出すことができるため,術前シミュレーションや手術プランニングのほか,若手医師への教育,患者への病態説明,他科やメディカルスタッフとの連携,リハビリテーション,また遠隔カンファレンスなどにも有用である.ARやMRは,患者の身体や実際の術野などの現実空間に3D画像を投影可能なため,術中支援に有用である.XRはいまだ発展段階ではあるものの,手術の安全性の向上や放射線被曝の低減に有用なツールとなり得ると考えられる.
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