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は じ め に
関節内骨折の治療における基本原則は,解剖学的整復(anatomical reduction)と強固な固定(rigid fixation)であり,これらは現在もなお骨折治療におけるゴールドスタンダードとされている.しかしながら,微細かつ重要な軟部組織に囲まれた近位指節間(PIP)関節において,これらの原則を厳密に実践することはしばしば困難であり,治療自体が高度に侵襲的となる場合がある.はたして,PIP関節においてもこの治療原則は普遍的に適用可能であるのだろうか.
不安定型PIP関節内骨折は,手指の骨折の中でも治療困難な症例の一つに位置づけられており,現在までにさまざまな治療法が報告されてきた1~4).黒島は2000年代初頭に,どこでも実施可能な手術用手袋とKirschner鋼線を利用した,張力の調整も可能な牽引型創外固定法(adjustable wire-frame traction method)[黒島原法]を考案して5~7),良好な治療成績をおさめてきた8~10).
本法の最大の特徴は,X線像上の整復状態にこだわらず,牽引後の術中の関節屈曲・伸展運動の観察と手応えから,滑らかに滑動する “関節適合性” を重視して,早期の可動域訓練によって関節内骨折がリモデリングされることをめざしている点にある.これは古くはtraction arthroplastyと呼ばれてきたが,筆者は運動により適合性が促進される特徴に着目して,この治療概念を「Kinematic Reduction(運動学的整復)」理論と呼称した11).
黒島原法は,理論的にも実践的にも有用性が高い一方で,作成におけるコツや定量的牽引力の設定に課題があった.また本邦の診療報酬制度においては,本法があまりに簡便なために創外固定器加算が適用されないという医療経済的問題も存在した.そこで,Kinematic Reduction理論をより忠実かつ簡便に臨床応用とし,かつ創外固定器加算を可能とするための新しい創外固定器 “Kinematic Frame traction system(KFシステム)” を開発した.本稿では,KFシステムの構造と使用手順を詳述するとともに,初期使用例における臨床的有用性について記述する.

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