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【要 旨】
目 的:細胞外マトリックス蛋白質の一種であるペリオスチンは,機械的ストレスや炎症と関連している.本研究の目的は,血清ペリオスチン値と椎間板変性(intervertebral disc degeneration:IVDD)の重症度との関連を評価し,さらにIVDDの潜在的な交絡因子である併存疾患,肥満,サルコペニア,骨粗鬆症との関係を明らかにすることである.
対象および方法:研究期間中(2020年1月~2022年12月)に当科で脊椎手術を受けた退行性腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニアおよび腰部脊柱管狭窄症)の連続症例196例を対象に,後ろ向きコホート研究を行った.IVDD重症度評価はMRIを用いてPfirrmann分類(grade 1~5)に基づいて行い,すべての腰椎椎間板(L1/L2~L5/S)のPfirrmann分類を合計し,累積Pfirrmann分類(grade 5~25)を算出した.血清ペリオスチン値は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(シノテスト社)を用いて測定した.まず累積Pfirrmann分類と血清ペリオスチン値の間で,Spearman順位相関係数(Spearman’s ρ)を算出した.次に累積Pfirrmann分類(中央値17を基準にカテゴリー化)と血清ペリオスチン値(中央値31ng/mlを基準にカテゴリー化)の関係を調べるために,多変量ロジスティック回帰を行ってオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した.潜在的交絡因子として,年齢,性別,body mass index(BMI),併存疾患(Charlson併存疾患指数),貧血,脊椎疾患(腰椎椎間板ヘルニアおよび腰部脊柱管狭窄症)を調査した.
結 果:椎間板変性の重症度(累積Pfirrmann分類)と血清ペリオスチン値との間に有意な相関関係があった(Spearman’s ρ=0.690,p<0.001).すべての潜在的交絡因子を調整した多変量回帰モデルにおいて,血清ペリオスチン値(>31ng/ml)は累積Pfirrmann分類(>17)と有意に関連していた(OR=19.4,95%CI:8.2~46.0).
結 論:血清ペリオスチン値は,IVDDの診断や進行度・活動性の評価,予後予測や治療選択の判断に有用なバイオマーカーとなる可能性がある.

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