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MRIのプロトン密度脂肪分画(PDFF)
粕川 雄司
1
1秋田大学医学部附属病院リハビリテーション科
pp.480-480
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_480
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Magnetic resonance(MR)は,水分子と脂肪分子に属するプロトン(水素原子)の磁気共鳴現象を使用して信号を取得するため,脂肪の定量化に適した手法である.MRIの磁場環境において,プロトンは固有の共鳴周波数を有し,水と脂肪は異なる共鳴周波数を有することから,体内の組織中で励起されると最初は位相がすべてそろうが,時間の経過とともに共鳴周波数の違いによりプロトン位相のずれが生じ,水と脂肪それぞれの信号値に差が生じる.MRIの撮像法の一つである6point Dixon法によるchemical shift encoding-based water-fat MRI(CSE-MRI)では,水分子のプロトン信号と脂肪分子のプロトン信号の間の共鳴周波数の違いを利用してプロトン密度脂肪分画(proton density fat fraction:PDFF)を定量的に測定することが可能となる(図1a).PDFFは肝臓などの組織でのプロトン密度における脂肪に起因する分画のことである1).複素信号を用いるケミカルシフト法により水信号と脂肪信号を分離し,信号脂肪分画を測定することで肝臓,脂肪,骨髄などの幅広い組織で応用可能となる普遍的な脂肪定量法として期待されている.PDFFによる脂肪の定量化は,特に肝臓全体のトリグリセリド濃度を正確にマッピングできる非侵襲的なバイオマーカーとして注目されており2),肝臓における組織学的脂肪沈着分類と良好な相関が報告されている3).
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