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は じ め に
ビタミンDは食事からの摂取に加え,日光への曝露により皮膚で産生される脂溶性のステロイドホルモン前駆体で,全身の健康維持に重要である.ビタミンDの栄養状況は,血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]値を測定することによって評価できる1).英国のBiobank参加者の解析で,ビタミンD不足は癌,心血管病,呼吸器疾患による死亡率上昇と関連することが報告されている2).また,疫学研究により25(OH)D値が低いと,末梢動脈疾患,心筋梗塞,心血管疾患死亡率,2型糖尿病,骨折,転倒,高血圧,多発性硬化症,結腸直腸癌・乳癌といった疾病リスクが増加し,結果として死亡率全般も増加することが明らかにされている3).
2018年11月より,骨粗鬆症の治療開始時に保険適用で血清25(OH)D値が測定できるようになった.ビタミンD不足は転倒・骨折のリスクを増加させること,骨吸収抑制薬の治療においてビタミンDが不足していると十分な治療効果が得られないことなどが報告されていることから4),骨粗鬆症患者のビタミンD栄養状況を把握することは重要である.
近年,骨粗鬆症診療は医師とメディカルスタッフが連携して行われるようになった(骨粗鬆症リエゾンサービス).当施設では,医師による骨粗鬆症外来の隣で骨粗鬆症看護外来を行っている.薬物治療を開始した,あるいは行っている患者に対して,看護師がパンフレット,手帳,DVDなどを用いて,栄養指導(蛋白質・カルシウム・ビタミンD・ビタミンK摂取,日光浴),運動指導(筋力トレーニング,バランストレーニング),薬物治療継続の支援を行っている.また,希望者には,健康運動指導士や理学療法士が実施する運動教室(転倒予防を主目的とした,3ヵ月間のプログラム)に参加してもらっている.多職種で行う骨粗鬆症診療において,医師・看護師・理学療法士が患者のビタミンDの栄養状況とそれを改善する必要のある患者像を把握することは重要である.
われわれ医師・看護師・理学療法士のチームは,日常診療のデータを活用して患者の血清25(OH)D値を多角的に解析したので報告する.
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