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ソビエト連邦から移民してきた英語が話せないユダヤ人腰痛患者のアナムネと通訳をドイツ語で行った話
花岡 英彌
1
1井上記念病院名誉院長
pp.472-472
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_472
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それは,1978年から1979年にかけて米国ClevelandのMt. Sinai Hospitalにレジデントとして留学していた時のことであった.ソビエト連邦(ソ連)から移民してきた英語が話せない腰痛のユダヤ人の30歳前後の男性が入院してきた.主治医のoffice(外来)を受診した際は英語が話せる親族か知人が付き添っていたはずであるが,病院では一人でベッドに寝ていた.私はこの病院に来る前は,ニューヨークに同じ名前の大学病院があって,広島の原爆によるやけどの少女たち数十人を形成外科手術で無料で治療したというくらいしかMt. Sinai Hospitalについての知識はなかった.病院に来てみると,ドイツ系の名前のドクターが割合多くて少し驚いたが,みなユダヤ人であるということが徐々にわかってきた.ユダヤ人のなかではドイツ系の名前の人が格が一番上であるということも後で知った.私の先生のDr. Friedmanもドイツ系の名前である.Mt. Sinaiは英語で「マウント・サイナイ」と発音するが,旧約聖書ではシナイ山と呼び,Moses(モーゼ)がエジプトを脱出後(紀元前13世紀ごろ),神に十戎を授かった神聖な場所である.米国全土にはMt. Sinai Hospitalが多数存在するということを後で知った.
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