特集 過疎地域の医療
ソビエト連邦の農村・辺地医療
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院
pp.41-44
発行日 1976年3月1日
Published Date 1976/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205847
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ソ連の保健システムhealth systemについて国際的な関心が寄せられ,情報が豊富になったのは,第2次大戦後のことである.特に1960年前後からWHOの旅行セミナーによって,この領域の各国の専門家がソ連を訪問する機会が増大し,これらが契機となってWHOにより多くの刊行物が出されたことが,この時期における急激な社会変動の進行と関連して,いっそう各国の関心を深めているといえる.
筆者に与えられた主題は,特集「過疎地域の医療と病院」の1部としての「ソ連の過疎地帯における医療」ということであるが,最初に若干の点についてご理解を得ておきたい.まず,過疎地帯ないしはremote placeという概念は,いずれも相対的なものであり,背景となる国あるいは地域の条件によって一律に論じられないことは明らかである.辺地・へき地の医療は,各国の切実な今日的課題であるが,国際的な場で日本の実情を紹介した場合,それがきわめて日本的なものであることを思い知らされた経験は,決して筆者だけのものではないだろう.ソ連との対比においては特にこの点が重要である.次に,ソ連の保健システムの最大の特色は,文字どおり健康増進からリハビリテイションまでを包括する国家システムstate systemが形成されていることである.
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