Japanese
English
経験と考察
鏡視下腱板修復術に対するトラネキサム酸の有効性
Utility of tranexamic acid for arthroscopic rotator cuff repair
江川 琢也
1
,
水掫 貴満
2
,
仲川 喜之
3
,
倉田 慎平
4
,
井上 和也
5
,
田中 康仁
4
T. Egawa
1
,
T. Mondori
2
,
Y. Nakagawa
3
,
S. Kurata
4
,
K. Inoue
5
,
Y. Tanaka
4
1岡波総合病院整形外科
2宇陀市立病院奈良肩肘センター
3宇陀市立病院
4奈良県立医科大学整形外科
5奈良県立医科大学スポーツ医学
1Dept. of Orthop. Surg., Okanami General Hospital, Iga
キーワード:
tranexamic acid
,
arthroscopic rotator cuff repair
,
anti-bleeding
Keyword:
tranexamic acid
,
arthroscopic rotator cuff repair
,
anti-bleeding
pp.1051-1054
発行日 2020年9月1日
Published Date 2020/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_1051
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は じ め に
腱板断裂の手術として関節鏡視下腱板修復術(ARCR)はスタンダードな手術となっている.ARCRにおいて,出血対策は視野確保に重要であり,手術が円滑にすすむかどうかの鍵を握っている.出血対策として,潅流液にエピネフリンを0.33mg/l加える方法などが報告されている1).しかし,エピネフリンを使用した合併症として,まれではあるが心室頻拍や不整脈が報告されている2,3).そこでわれわれは人工膝関節全置換術などの出血対策として用いられているトラネキサム酸(TXA)を使用することで,ARCRの術中の出血量を減少し,円滑にかつ安全に手術がすすめられるという仮説を立てた.
TXAは,リジン類似構造をもち,プラスミンのリジン結合部位と強く結合することで,プラスミンがフィブリンに結合するのを阻止する.これによりプラスミンがフィブリンを分解するのを抑制することにより,止血される4~7).この止血作用を利用し,近年TXAを投与することで,人工股関節置換術,人工膝関節全置換術後の周術期出血を減らすことができるという報告が散見される8~11).肩関節外科の分野でも,人工肩関節置換術にTXAを用い周術期出血が減少したという報告もある12,13).しかし,TXAをARCRに使用し出血対策を行ったという報告は,われわれが渉猟しえた限り存在しない.そこで,われわれはARCRにおいてTXAを術前に静脈内投与し,有効性について検討したので報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2020