連載 整形外科医が知っておきたい他科の知識
高齢慢性腎臓病患者の骨粗鬆症と骨折
進藤 稔弘
1
,
正木 崇生
1
1広島大学腎臓内科
キーワード:
慢性腎臓病
,
骨粗鬆症
,
骨折
Keyword:
慢性腎臓病
,
骨粗鬆症
,
骨折
pp.1375-1379
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_1375
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は じ め に
わが国の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者は約1,330万人と推計され,成人の約8人に1人はCKDである.加齢はCKDの危険因子の一つであり,40歳を過ぎたころより加齢とともに腎機能は低下していくことが知られている.特に高齢化がすすむわが国では70歳代以上の全人口のおよそ半数がCKD患者となっている.整形外科を受診する大多数は高齢者と考えられるので整形外科医はCKDについてもある程度理解しておく必要がある.
CKDとはなんらかの腎障害,あるいは糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が60ml/min/1.73m2未満の状態が3ヵ月以上持続することと定義されている.このなかには透析患者も含まれ,CKDの重症度分類はGFRと尿蛋白量で分類されている.本稿では高齢CKD患者で問題となる骨粗鬆症と骨折,また腎臓内科からみた専門的診療について述べる.骨では絶え間なく骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が繰り返されている.正常な骨代謝では骨芽細胞,破骨細胞の分化調節と活性がコントロールされ,骨形成と骨吸収のバランスが一定に保たれる.このバランスが崩れると骨強度が減弱し骨粗鬆症の状態となる.骨粗鬆症では正常状態ならば骨折にいたらないレベルの低エネルギー外傷での骨折(脆弱性骨折)を起こすリスクが高まる.骨強度は骨量と骨質で規定されており,骨量あるいは骨密度は脆弱性骨折発症リスクと有意に相関する因子である.
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