誌説
医師にとってマルチタスクとは
藤田 順之
1
1藤田医科大学整形外科教授
pp.1044-1044
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_1044
- 有料閲覧
- 文献概要
新型コロナウイルスの影響で,webミーティングが頻繁に行われるようになり,学会や研究会には現地に行かなくても参加できるようになった.本来,学会への参加には同じ分野に興味をもつ先生方と交流を深めるという意味合いも強く,また,若手の整形外科医にとっては,外来,病棟,手術室の日常から解放され,気分がリフレッシュされる要素も強かったわけではあるが,現在はオンデマンドの準備やリモートの発表を医局で行うことに物足りなさを感じている医師も多いと思われる.しかしながら,仕事量という点からみると,学会中に他の会議に参加したり,外来診察を行ったり,空いた時間に手術ができることもあり,以前では考えられないほど生産性が高くなっているところもある.今後臨床面では,遠隔診察を行う機会も増えていくことが予想されるが,手術に関しても最近では外科分野などで遠隔ロボット支援手術の開発が盛んに行われている.これまで国内外を問わず,移動に多くの時間が費やされてきたが,その多くの部分を削減できるようになり,いわゆる無駄が省かれ,今後さらにその傾向は加速する可能性もある.そういったことで,以前よりもたくさんの仕事が同時に行えるようになっており,これをわれわれはマルチタスクと呼んでいる.しかし,マルチタスクは生産性という点で素晴らしいことには間違いはないが,注意しないと一つ一つの仕事が表層的になっていることも多く,また,マルチタスクでは頭のなかをマルチシフトしているだけであって,全体として仕事のqualityが落ちているという話もある.
© Nankodo Co., Ltd., 2021