1．医薬品の臨床開発

Clinical trials for drug development

は じ め に

　医薬品開発には，はじめてヒトに医薬品を投与してから，その医薬品の薬事承認を得るまでの早期開発段階と，薬事承認を得てから適応拡大や，ほかの薬剤やモダリティと組み合わせることによる最適化の後期開発段階が存在する．早期開発は製薬企業が中心となってすすむが，アカデミアの研究者にとっても，開発の方向性についてエキスパートオピニオンを述べることや，治験の参加施設といった形で一定の役割を果たす．さらに後期開発では，希少がんに対する適応拡大を医師主導治験で行ったり，研究者主導試験として最適化の臨床試験を主導したりとアカデミアの研究者の役割が大きい．

　本項では，まず伝統的な第一相試験から第三相試験へいたる開発の流れを概説し，各開発相で最近行われているデザインの工夫について述べる．続いて，迅速化・効率化を追求した最近の医薬品開発のトレンドを紹介し，最後に医薬品開発全体の中での医師主導治験・研究者主導試験の役割を解説する．