誌説
海外で研究する意味
谷口 昇
1
1鹿児島大学整形外科教授
pp.4-4
発行日 2019年1月1日
Published Date 2019/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_4
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最近,研修医との懇談会で,「海外で研究する意味は何ですか?」と聞かれた.私がかつて留学していた,アメリカ合衆国サンディエゴにあるスクリプス研究所Martin Lotz先生のラボは,変形性関節症の病態解明を目指した研究を一貫して行っており,アメリカ国立衛生研究所(NIH)より長年獲得しているagingグラントの一環として全米より新鮮な屍体膝が送られてくる稀有な環境であった.膝を捌いて軟骨や半月板などを取り出し,培養したりバイオメカニズムの実験を行ったりするのであるが,中でも若い人の膝などは貴重であった.正常ヒト軟骨を用いて実験ができる施設など,日本にあろうはずもなく,そういった意味では海外で研究する意味があったと思う.しかしながら,そういった研究面でのメリット以外に,今,果たして海外に行く必要があるのだろうか? インターネットが発達し,リアルタイムで世界の情報が得られ,電子メールにより瞬時のコンタクトが可能である現在,留学の意味は薄れてきているのかもしれない.
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