整形トピックス
マンガン造影MRIを用いた小動物自発脳活動可視化
有村 大吾
1,2
,
篠原 恵
1
,
丸毛 啓史
1
,
釣木澤 朋和
3
,
高橋 由香里
2
,
加藤 総夫
2
1東京慈恵会医科大学整形外科
2東京慈恵会医科大学神経科学研究部
3Neurospin CEA
pp.738-738
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_738
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慢性痛は,「組織損傷の通常の治癒期間を過ぎても持続する,明らかな生物学的意義のない痛み」と定義される1).慢性痛の臨床的問題点は,苦痛により持続する負情動であり,その背景には中枢神経系の可塑的変化があると考えられてきたが,有効な解析手法がなく詳細は不明であった.しかし近年,覚醒患者への急性刺激時または安静時におけるblood oxygenation level dependent(BOLD)[血中酸素レベル依存]信号変化に基づいた脳画像化,すなわち機能的MRIによる研究が発展を遂げ,健常者とは異なる慢性痛患者の脳内回路の特徴が明らかになってきた.例えば,Hashmiらは,安静時のBOLD信号の自発的変動を評価することにより,保存的治療に抵抗する慢性背部痛患者における自発痛に伴い活性化する脳領域が,痛みや報酬に関与する脳領域から情動に関与する脳領域へとシフトしていることを報告した2).
慢性痛のさらなる病態解明や新規診断法・治療法の開発のためには動物モデルによる前臨床研究が必須である.近年,機能的MRIによる全脳の網羅的解析により,慢性痛動物モデルの脳活動変化を調べた報告が相次いだ.しかし,動物での撮像時に使用せざるを得ない麻酔薬によりBOLD信号が変化するという報告3)や,無麻酔下での撮像に必要となる馴化トレーニングがストレスとなって疼痛を修飾するという報告4)などがあり,慢性痛に特徴的な脳活動をBOLD法によって解析することの困難は解決されていなかった.そこでわれわれは,この問題点を克服するため,陽性造影剤である塩化マンガンを使用したマンガン造影MRI(MEMRI)に注目した.
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