私論
骨折リスクを減らすための骨粗鬆症治療の重要性
串田 剛俊
1
1関西医科大学整形外科准教授
pp.222-222
発行日 2018年3月1日
Published Date 2018/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_222
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私は関節リウマチ(RA)と脊椎外科を専門に診療を行っていますが,RAと脊椎外科に共通する骨粗鬆症治療も行っています.近年,骨粗鬆症の内服治療や脆弱性椎体骨折に対する外科的治療の進歩は目覚ましく,積極的な骨粗鬆症治療を行えるようになってきました.本稿では,これらの話をさせていただきたいと思います.
現在のわが国の平均寿命は男性81歳,女性87歳であり,そのうち65歳以上の人口割合は2013年に25%を占め,今後,2019年には29%になると予測されます.しかし,健康寿命は平均寿命より約10年低いとされ,いかに介護を受けずに健康な生活を送っていくかが課題です.実際に,国民生活基礎調査では65歳以上で要介護者になった主な原因の1位が脳血管障害(17.2%),2位が認知症(16.4%),3位が骨折・転倒(12.2%)となっています.骨折は一つあると負の連鎖で,次々と新たな骨折が発生していきます.大腿骨近位部骨折があると椎体骨折を生じる可能性は2.5倍,逆に椎体骨折があると大腿骨近位部骨折を生じる可能性は2.3倍と言われています.そして,大きな骨折は日常生活動作(ADL)の低下だけではなく,生命予後にも大きく関与し,5年生存率は大腿骨近位部骨折が40%,椎体骨折が70%と報告されています.
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