連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・34
日本の医療を考える・5
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.810-811
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101171
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これまで4回にわたり,医師への過剰な負担とburn outの問題,医療の量的な課題(医師の地理的偏在・診療科的偏在),医療の質・安全面的な課題,増大する医療費の課題など,日本の医療が抱える問題について考えてきた.また,その中で,医療制度をどのように作り上げていくかについては各国が悩み模索していること,また,こうした課題にはあまりに多くの要素が複雑に絡み,どの国も簡単には解決の糸口を見つけ出すことができていないことなどを述べてきた.日本が直面しているこうした課題について,根源的な解決方法はあるのであろうか.その方向性について,今回は,いくつかの重要な点を整理してみよう.
第一は,医師に過剰な負担がかかり,時にburn outなどが起こっている状況の中で,これを解決していくために医療関係者の“やる気”を引き出し,医療の質を高める制度の構築が必要である.この中には,専門医制度の資格の厳格化や医療関係者の生涯教育の充実などが含まれる.医療関係者自身の資質を高めることで,国民・住民からの信頼感は高まる.こうした取り組みはプロフェッショナル集団としての医療関係者自らの努力が必要である.また,診療報酬制度においては,医療の「量」は反映されているが,「質」については,まだ十分に反映されているとは言えない.これを診療報酬に反映させるような新しいフレームワークなども必要となってくるであろう.
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