特集 診断の糸口はここにある 手がかりから紐解く臨床推論
第4章 消化管
[Case 5 排便で改善する腹痛]下痢と腹痛がありトイレに駆け込みます.排便で腹痛は改善しますが,原因が何であるかわからなくて不安です
千葉 俊美
1
1岩手医科大学 口腔医学講座関連医学分野
pp.471-475
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika132_471
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診断は何か
手がかり
2年ほど前に急性胃腸炎を発症した後から,排便回数の増加と週に2~3日の割合で食後に腹痛が出現し,排便によって腹部症状は軽減する
粥状便および軟便を認め,排便回数は1日4~5行で血便は認めていない.体重減少はない.微熱なし.肛門痛なし
便意切迫感があり,とくに仕事中に腹痛が出現すると,すぐにトイレにいけないことをストレスに感じている.不眠は認めていない
油分や香辛料の多い食事後に下痢気味となり腹部症状を認める
血液検査所見(表1)で好酸球数を含め明らかな異常所見を認めない
下部消化管内視鏡検査(図1)で明らかな粘膜の異常所見を認めず,生検においても好酸球浸潤,肉芽腫(granuloma),アミロイド沈着,collagen bandなどの特異的所見は認めない
上部消化管内視鏡検査(図2)で竹の節状外観などを認めず,十二指腸生検においてアミロイド沈着,絨毛上皮の萎縮などを認めない
腹部CT検査(図3)において,腸管壁の浮腫状変化および腹水を認めない
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