特集 エキスパートがお答えします! 日常臨床のあるあるの疑問
第8章:腎臓
慢性腎臓病の患者にプロトンポンプ阻害薬(PPI)は投与しないほうがよいのでしょうか?
白井 佳那
1
,
河原﨑 宏雄
1
1帝京大学医学部附属溝口病院 内科
pp.591-593
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika130_591
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お答えします プロトンポンプ阻害薬(PPI)は臨床現場で広く使用されていますが,急性間質性腎炎の原因となる可能性があります.米国のMayo Clinicからの報告1)では,1993~2011年に腎生検で診断された薬剤性の急性間質性腎炎95例の原因の内訳では,1位が抗生物質(49%),2位がPPI(14%),3位が非ステロイド抗災症薬(NSAIDs)(11%)となっています.一方,慢性腎臓病(CKD)とPPIの関連性を示唆する観察研究も散発的に報告されてきましたが,とくに2017年に入ってメタ解析によりPPIとCKDとの有意な相関が示されました2).しかし,腎機能低下との因果関係について確定的な見解はなく,現時点では適切に使用されているPPIを中止すべきというものではないと考えます.すべての薬物療法と同様に,PPI処方中はその必要性を定期的に見直し,患者へ与えるリスクとベネフィットを勘案して,漫然とした長期投与を避けるよう注意することが必要と考えます.
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