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腫瘍随伴症候群とは「原発巣やその転移巣からの直接的な物理作用によらないがんに関連する臓器機能障害」と定義され,腫瘍による浸潤,圧迫,閉塞に伴う症状を除く1).さまざまな悪性腫瘍でみられるが,肺がんで最も多く約10%程度にみられる1).その症状の程度は原発巣の大きさとは相関せず,時に悪性腫瘍の診断以前に発症し,診断のきっかけになることがある2).腫瘍随伴性症候群の原因としては,① 腫瘍が産生する機能性蛋白,ホルモンあるいはサイトカインなどの生理活性物質の作用による場合,② 腫瘍と正常組織との間に形成される不適切な免疫交差反応による場合,の二つがあげられるが,いまだメカニズムが解明されていないものも存在する1).また,生じる病態や障害される臓器の違いから,① 内分泌腫瘍随伴症候群,② 傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS),③ 粘膜皮膚腫瘍随伴症候群,④ リウマチ性腫瘍随伴症候群,⑤ 血液学的腫瘍随伴症候群,⑥ 腎性腫瘍随伴症候群,⑦ 眼科学的腫瘍随伴症候群,⑧ 凝固系腫瘍随伴症候群,などに分類される(表1).肺がんにおいては組織型が腫瘍随伴症候群に関連し,扁平上皮がんにおける高カルシウム血症と小細胞肺がんにおける抗利尿ホルモン不適合分泌異常症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)が最も有名である2).高カルシウム血症や血液学的腫瘍随伴症候群などは予後不良であることが報告されているが,自己抗体が関与するPNSでは反対に生存期間が延長する傾向があることが報告されている.多くの腫瘍随伴症候群に共通した治療法は腫瘍そのものの除去であるが,腫瘍が除去できても症状が改善しない場合もある.以下に肺がんに伴う代表的な腫瘍随伴症候群を取り上げ,それぞれの診断法や治療法について解説する.
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